デザインライフ設計室

コラム

これまでの設計事例 | 墨田の住宅

『墨田の住宅』 -マンションリノベーションの事例-

築29年ほどの6階建てマンション。その最上階の住戸をリノベーションしました。クライアントの両親が住んでいた住戸を引き継ぎ、家族3人と猫1匹が暮らす住まいとするために全面的に手を入れました。最初にすべてを解体し、スケルトンの状態にしてから、断熱性能を向上させるために外周壁面と屋根面に吹付けによる断熱を施しました。さらに既存のアルミサッシを全て交換することで断熱性能の向上をはかりました。

住戸の玄関は5階に位置するため、室内に階段があるメゾネットのようなつくりです。この特徴を活かして、外と内をつなぐ階段周りの空間が気持ちを切り替えるための静謐な場となるようにしつらえられています。この階段室を中心に南北方向に水平にのびる住戸は、南側のスペースを家族が集うためのリビングダイニングキッチンとしました。一方、落ち着いた雰囲気の北側には個室と水まわり設備を配置しています。家族それぞれの個室のうち、2部屋は可動する間仕切りにより1部屋につなげることもできるような可変性があります。南のバルコニーに面する大きな窓面には障子とスクリーン引戸を嵌めることで、室内の雰囲気を損なうことなく、日差しの調整を行いつつ景色が楽しめるようになりました。窓の上に設けた室内側の庇はキャットウォークとしても活用できるようにつくられています。

南側のパブリックな空間と北側のプライベートな空間では仕上げ材を変えることで、それぞれの場の振る舞いに合わせた雰囲気を演出しました。階段室を中心に南側と北側で性格の異なる空間がグラデーションのようにゆるやかに混じりあうような、静謐でありながら優しさと美しさが同居する住宅を目指しています。

玄関は下の階にあるので、メインフロアには室内階段で移動します。この移動空間は外と内をつなぐような場になるため、気持ちの切り替えるができるように、静謐で落ち着いた雰囲気となるような素材の組み合わせでつくられています。玄関の床はモルタル洗い出し。猫が飛び出さないようにガラスの引き戸を用いて空間を仕切っています。

階段から繋がるホールにはガラス間仕切りと一体で造作した本棚がしつらえられています。ガラスの間仕切りは室内の温熱環境を整えるために設けられていますが、人が出入りする扉のほかに、猫専用の小窓をつくることで、猫は自由に上下階を行き来できるようになります。

南のバルコニーに面する窓面には障子とスクリーン引戸を嵌めています。障子とスクリーン引戸を使い分けることで日差しの調整をおこない、外の景色と風をゆるやかに取り入れます。窓の上の室内側の庇のような部分は光を反射する効果があるのと同時にキャットウォークを兼ねています。左右の棚板の穴から昇り降りをして歩き回ることを期待しています。

キッチンカウンターはホールの本棚との統一感を意識して同じデザインとしています。キッチンカウンターの背面の扉の奥は、家電収納、食器棚、冷蔵庫が収納されるスペースです。

北側に配置した家族それぞれの個室のうち、2部屋は可動式の間仕切りにより1部屋につなげることが可能なつくりになっています。プライベートな空間となる個室は南側のパブリックなスペースとは仕上げ材を変えることで、落ち着いた静かな雰囲気の場となるように配慮されています。床は無垢の桐材、壁と天井は漆喰で仕上げられています。

■用  途:専用住居
■専有面積:121.17㎡
■竣 工 年 :1993年(新築時)
■構造規模:RC造ラーメン構造 | 6階建ての5階・6階
■設計期間:6.0ケ月
■工事期間:7.0ケ月
■施工会社:ミキホーム
■写  真:中村 晃

この写真はリノベーションの完成直後に撮影しています。引っ越しをして、家族の生活と住まいが馴染んだ頃に改めて暮らしの様子を撮影させていただきたいと思っています。

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