デザインライフ設計室

コラム

片づく家を建てるには つくりつけ収納のアイデア。

2022.5.8

きれいに片づく住まいには理由があるものです。家づくりの際に、必要な場所に必要な収納スペースをつくっておくことで、片づく住まいは実現します。そんな片づく収納スペースのつくり方について、実際の事例を交えてご紹介します。

玄関回りの収納は壁に埋め込むと、すっきり片づいた印象に

まずは住まいの出入口、玄関まわりの収納からご紹介します。

玄関の収納ですぐに思い浮かぶのは、靴収納です。一般的に靴の収納は、飾り棚を兼ねた家具のような収納をつくることが多いでしょう。一方、壁の中に埋め込まれた収納をつくることもできます。

上の写真が、後者に該当します。右側の木枠が玄関扉、その手前の扉が靴収納です。このタイプの収納のよいところは、壁の中に埋め込まれているので、余計なでっぱりがほとんどないところ。すっきりとすることです。靴をきちんと収納して片づけることができるうえに、玄関になにもない状態をつくれます。

(写真左が傘収納、写真右が靴収納、それぞれ扉を開いたところ)

この事例では、玄関扉の枠と一体となるように、傘収納もしつらえています。傘収納の扉には、全面に鏡を貼っているので、収納の扉が閉まっているときには姿見として使用しています。

この事例のように、使う場所のそばに適切に収納スペースを確保しつつ、なにか別の機能をもたせると便利。気持ちよく、効率的に暮らせます。

キッチン収納は、カウンターのそばのパントリーが便利

(エアコンの奥右側がパントリーの入口になっています)

次にご紹介するのは、キッチン回りの収納です。キッチンカウンターそのものには、計画的に収納スペースを考える方が多いと思います。ただ、それだけでは不十分。なにをどこに収納するかを考えて、引出しや扉を計画していきましょう。

加えて、パントリーについても検討してみましょう。キッチンカウンターのそばに、ざっくりとものが置ける収納スペースがあると、とても便利です。

(左手の奥まった部分にパントリーがあります)

パントリーには、使用頻度が高くない調理器具や調理家電、缶詰などの食材をストックします。ダイニングやリビングから、中が見えないので、見栄えを気にすることなく、ラフに使えます。

こうした役割のある場所が、キッチンのそばにあることで、キッチンがすっきり。加えて、作業効率が格段によくなります。

リビングとダイニングには、収納と一緒に家族の居場所を複数つくると楽しい

続いてリビング・ダイニングの収納です。私の場合、リビングにはテレビボードを兼ねた収納をつくることが多くあります。そのほかに、家族で共有するものをしまって置く場所をつくることも。こうした収納があると、くつろぎの場ができやすくなり、居心地がよくなるのです。

上の写真の正面に見えるのは「図書室」です。家族で共有する、本や小物などを収納しておく本棚を、壁一面に設けました。この場所で、子どもたちが本を読んだり、夫が畳の床でくつろいだりしているそうです。

収納と一緒に家族の居場所を複数しつらえると、そこが自然にお気に入りの場所になるものです。もちろんバランスを考えることは必要ですが、こうしたお気に入りが、住まいのあちこちにあると、その時々の気分に合わせて居場所を選べるように。

私のこんな家づくりが、住まい手からも、実際に気に入ってもらえているようです。

寝室では、布団の収納とクローゼットの機能がポイントに

次は個室の収納です。従来の住まいでは寝室には押入れがありました。今はあまり見かけなくなりましたが、やはり、収納力のある押入れのような収納があると便利です。

上の写真は畳敷の寝室です。左写真の左側の引戸を開けると押入れのような納戸があります。納戸の中には押入れのように奥行のある中棚があり、布団を収納しておくことができます(上写真右側)。

ここには、天井付近にハンガーパイプを渡しているので、洋服をかけておくクローゼットとしても使えます。いくつかの役割を1か所にまとめることで、省スペースながら、収納力のある納戸ができました。

もうひとつ、寝室の事例をご紹介します。収納の一部が、まるで床から浮いているようにデザインしています。

ロールスクリーンで目隠しをした収納部分は、クローゼットになっています。床から浮いているのは、クローゼットの下の板張り部分に、たたんだ布団を収めるスペースを確保するため。

洋服をしまうクローゼットと、布団をしまう押入れ。両者の使いやすさを考えると、奥行をうまく使う必要があります。結果、このように別々に収納する方法になりました。収納するものに合わせて奥行を変える、というちょっとした工夫で、省スペースでも、しっかりと収納できるように。

最後におまけをひとつ。この寝室の床下には、コンセントが収納されています。「コンセントを目立たせたくない」と要望した住まい手に応えたもの。フタで隠せるようになっています。これなら、フタのくぼみから出る、電源コードしか見えません。生活空間の中では、配線の収納も案外気になるポイントです。

今回ご紹介した事例は、すべてがつくりつけの収納です。注文住宅の場合は、あらかじめ計画段階で要望を伝えることができると、使い勝手のよい、快適でスッキリとした収納計画を実現できます。

片づく住まいには、適切な場所に適切な収納が欠かせません。ぜひ参考にしていただけるとうれしいです。

  • ESSE online 「日刊住まい」2022.5.8 掲載
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