デザインライフ設計室

国分寺の住宅

House in Kokubunji
newhouse

特徴的な玄関ホールと、それを見下ろす開放的なLDKのある「国分寺の住宅」。この住まいが建つのは周囲を家に囲まれた旗竿敷地。旗竿形状の土地が持つ弱点を克服する工夫が詰まった、大きな気積を内包する小さな住まい。少しずつ手を入れながら、家族の成長とともに住まいも成長を続けています。

当初は中古住宅を購入して、リノベーションすることを考えていたNさんご夫婦。数ヶ月にわたり、建築家と一緒に幾つもの物件を見て回りました。目の前の物件を見ながら会話を繰り返していくことで、中古住宅をリノベーションするのではなく、新築住宅を建てるという選択に至りました。
「これは青木さんが、物件探しをしながら長くコミュニケーションを取ってくださったことでこそ辿り着けた、最良の選択肢だったと思います」(Nさん)。
「青木さんには、建築に明るくない私たち夫婦が、上手く言葉にしきれない曖昧なイメージまで汲み取ってもらえていると感じて、安心してお任せできると思ったことを覚えています」(Nさん)。
2階に配置したLDKは、段違いに掛かる屋根のすきまに設けた三角形の高窓から、日射しが差し込み、明るく奥行きを感じるワンルームです。
床にモノを置かなくて済むように、壁の多くは用途に合わせた棚がつくり付けられています。吹き抜けの手摺を兼ねた棚は、レコードが収まり、ターンテーブルが置かれたDJコーナーとしてつくられています。壁際に収納された引き戸を閉めると、吹き抜けと連続した個室として使うことができるしつらえです。
「三方を家に囲まれていますが、南向きの高窓からの日差しが2階のリビングを明るくしてくれます。階段の窓が、わずかな隙間でも開放感を確保してくれていて、閉塞感は感じません」(Nさん)。
この住まいの特徴のひとつは、アプローチからつづくような、土間コンクリートの広い玄関ホールがあることです。玄関ホールの上空は吹き抜けていて、2階のLDKとゆるやかにつながっています。吹き抜けの南面に設けられた大きな窓は、2階を明るく開放的にしながら、1階の土間の隣の部屋まで光を届けるように考えられています。
「小さな土地に建てた小さな住居ですが、玄関に吹き抜けの土間をつくり、2階のリビングと空間が一体化しているようで、狭いながらもゆったりした空間の広がりが感じられます」(Nさん)。
玄関ホールは、画家である奥さんが絵を描くアトリエを兼ねています。最大2m角のキャンバスを床に置いて描くことができる広さを確保しています。元来、アトリエは北側の安定的な光を好みますが、この住まいではスペースを有効に使うために、絵を描いていない時は広い玄関として使えるように南側に配置されています。
この玄関ホールには玄関扉のほか、もうひとつ勝手口の扉があります。勝手口の外はシンボルツリーのある小さな庭。時折、木漏れ日が土間に写り込み、暮らしを彩ります。
土間とつながる部屋は、壁面に棚と机をつくり付けました。今は開放感のある多目的な場所ですが、引き戸を追加することで個室として使えるように、あらかじめ敷居と鴨居の準備をしています。
1階の北側には寝室があります。寝室は畳敷きの静謐な雰囲気で、落ち着いてゆっくり休めるしつらえです。階段を下りた場所に、トイレ・洗面・洗濯機・浴室などの水廻りをまとめて並べることで、生活の動きがスムーズになるように配慮されています。
住まいが完成してしばらく経ったある日。アプローチ部分に小屋を建てたいと、Nさんから連絡がありました。大きなキャンバスの保管場所に悩んだ末に、小さな小屋を建てて収納場所にしたいと考えていました。
雨に濡れにくいように地面から少し浮いたように建つ小屋には、住まいと同じ勾配の屋根をかけました。小さな住まいと小さな小屋が、違和感なく周囲に馴染むように配慮されています。
「私たちが初めにイメージしていた、シンプルで素朴、品があり、かつ古い建物から感じられるような懐かしい空気を纏った理想の住居を建てることができて、大変満足しています」
古いものが好きで、大切にしたいと思っているNさんご夫妻らしいことばです。
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