2022.3.29
キッチンの配列は、おもに「壁づけタイプ」「2列型タイプ」「背面収納タイプ」に分かれます。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットが。3つの配列とそのバリエーションについて、実際の事例を交えて紹介します。
壁づけタイプだとムダな動きが出にくい
もっとも一般的なキッチンは、壁に向かって配置される、通称「壁づけタイプ」。壁に沿って、コンロやシンク、作業スペースなどを、横並びで配置します。
メリットは、使う人が横に動くことで、作業が効率的に流れていくことです。ムダな動きが少ないキッチンの配置と言えるでしょう。
一方、デメリットも。壁に向かってカウンターが配置されているので、家族の顔を見ながら、作業したり会話したりするのがやりにくいことです。コミュニケーションの際には、振り返らなければなりません。
写真は、私が依頼を受けて設計した、壁づけタイプのキッチンの一例です。キッチンの幅は、全体で約3.5mあります。
右の壁側の天板を木にすることで、キッチンを延長して調理以外の作業が行えるスペースになりました。たとえば、子どもの通園準備をしたり、お花を飾ったり。作業台や飾り棚として使用できるので便利だと、住まい手に好評です。
キッチンの左にあるのは、家電を置く可動棚です。キッチンから左に移動するだけで、家電を使った調理が行えるので、作業がはかどります。
ちなみに冷蔵庫の居場所は、家電の収納スペースと向かい合った位置(上の写真のバルコニーに出るガラス扉の左手)。冷蔵庫がダイニングから見えにくくなるように、壁で目隠ししています。「生活空間に、存在感ある冷蔵庫を目立たない。この見た目は快適ですね」とは、住まい手の談。
2列型タイプはコミュニケーションがしやすい
次に紹介するのは「2列型タイプ」です。2列型にはバリエーションがいくつかあります。
私が提案することが多いのは、こちらの写真のように、コンロを壁側に配置して、シンクをダイニング側に向けて2列に配置するものです。
コンロの壁側配置をすすめる理由。それは、油の飛び散りを少なくできて、掃除がラクだからです。アイランド(ダイニング側)にコンロを配置することもあります。その場合は、コンロの正面に耐熱ガラスを用いて壁をつくり、油の飛び散りを少なくするような配慮をしています。ガラスを使うのは圧迫感の軽減と見通しをよくするため。
2列型タイプのメリットは、カウンターでの作業スペースを確保しやすいことです。カウンターが2列あり、コンロとシンクをそれぞれ1列づつに分けて配置すると、作業スペースがそれぞれに確保できます。
また、ダイニングに向かってカウンターを配置すると、家族とのコミュニケーションもスムーズですし、ひとりで家事をする寂しさもなくなります。
一方、デメリットも。カウンターが2列に分かれているので、作業中に振り返る動作が必要に。効率が少し落ちます。また、もしコンロをアイランドに配置すれば、レンジフードがコンロの上に取りつくため、圧迫感が出ます。さらに、キッチンカウンターが2列になることで、価格も高くなりがちです。
背面収納タイプは使い勝手がよいキッチン
最後は、キッチンカウンターの背面に収納棚や家電置場を配置した「背面収納タイプ」について説明します。
キッチンカウンターは壁づけタイプと同じように配置し、背中側に収納スペースを設ける配列になります。背面収納には、扉つきの棚や引き出し、家電を置くオープンな棚などを、使う人の希望に合わせてつくることができます。
自由度の高さと使い勝手のよさが大きなメリットでしょう。このタイプを採用するには、ある程度の床面積が必要です。従って、面積の確保がデメリットに感じる方もいるでしょう。
キッチンのつくり方は、完全に個室化することもできますし、上の写真のように動線上に配置することもOK。動線上にキッチンを配置すると、個室から直接キッチンに入れたり、手前から奥へ通り抜けできたりするので、通路としての機能も兼ねることができます。
つくり方によっていろいろなバリエーションが考えられるので、住まいの形状や条件に合わせてアレンジしやすく住まい手の個性がでやすいことも特徴です。
今回紹介したほかにも、キッチンにはさまざまな形や配列があります。自身にとって使い勝手がよく、快適に使えるキッチンを見つけてみましょう。日々の生活が楽しくなり、家事の負担が軽くなると思います。
- ESSE online 「日刊住まい」2022.3.29 掲載